私のオンライン授業 第2回 —望月正道先生(麗沢大学 外国語学部教授)—

「私のオンライン授業」の第2回目は、望月正道先生(麗沢大学外国語学部教授)に前期から引き続き行っているオンライン授業についてお話を伺いました。

Google Classroomの活用でより深いレベルの処理に繋がる

———先生の大学では、前期に引き続き、後期も実習科目など以外は、オンラインで授業が行われていると伺っております。 本日は先生が考えられているオンライン授業のメリットとデメリットを中心にお話を伺っていきたいと思います。まず先生のご担当されている科目をお教えてください。
本務校では、「英語科教育法I 」「英語科教育法 II」「Reading Workshop」「Research and Presentation」それと「ゼミ」と「自主企画ゼミ」という科目を担当しています。またの非常勤先では、「英語教育学研究」という科目を担当しています。
———オンライン授業には、オンデマンド型と双方向がありますが、どのような形態で行われているか、またその授業にどのようなツールを使われているか教えてください。
すべての授業を双方向型で行っています。使用しているツールは、本務校、非常勤先でもZoomを使っています。その他に本務校ではGoogle Classroomで配布物を配布したり、提出物を提出させています。また授業始めの小テストも行います。非常勤先ではmanabaというツールによって、同じようなことを行っています。
———オンライン授業をやられて、どのような点が良いとお考えになられているか、具体的にご説明いただけますでしょうか。

「Reading Workshop」という授業を担当しています。 これは学生のリーディング力をつけることを目的とした授業です。私の場合にはイギリスの“The Independent”という新聞の記事を2つ読ませて 友人または先生に紹介したい方の記事を英語で要約し、なぜその記事について話したいのか理由を書かせています。オンラインが始まる前の通常の授業ですと、紙に書かせて提出させていました。

オンラインになってからは、Google Classroomを使って提出させることになりました。紙で提出させていた時には、赤字で間違いを直してコメントを書いていましたが、現在は学生が提出したものをコピペし、ワードに貼り付けてから直して、もう1回コピペしたものを送り返すことをしています。そうしますと学生はどこが直されたかというのが、ひと目でわからなくなります。自分が書いた原稿と私が直した原稿を見比べないと、どこが直されたのかが、わからないということになります。これが1つ良い点だと考えています。。

———それに対して、学生さんの反応はいかがでしょうか。
誤りがいくつあったということをメールで報告してくる学生が何人かいました。その中には、実はもっと間違えていたので、他にまだいくつ間違いがあると返事を送ると、また探して返信してくるような学生もいました。間違い探しかクイズみたいな感覚で見ているようでした。
———そのような反応に対してどのようにお考えでしょうか。
何かが記憶されやすくする要因に、何度も繰り返す頻度という要因と、処理レベルの深さという要因があります。自分が書いたものと、直されたものを見比べて考える。どこが違っているかと考えながら見直すというのは、より深い処理がなされるわけです。そうしますと、それはより記憶に残りやすく、どうしてここが間違えたのか、どういうところが違っているのかということを考えるきっかけになるのではないかなと思います。第2言語習得研究の立場から言うと、より深いレベルでの処理を行わせるということに繋がっているかと考えます。

YouTubeの動画で自分が納得するまでプレゼンの練習ができる

———他にも何か先生が行っているオンライン学習で、良い点と考えられるものがございましたら教えてください。

「Research and Presentation」という新設された1年生の必修科目ですが、リサーチしたことを英語でプレゼンテーションするという授業で、同じ教員が週2回担当しています。インバウンドつまり外国人旅行客が激減したわけですが、外国の人に自分の町の良いところを英語で伝えて、ぜひ自分の町に来てくださいという紹介動画を作って、YouTubeにアップするということを前期の終わりにさせました。

プレゼンテーションということですので、通常の授業でしたら、おそらく教室の前に出させて、パワポのスライドを使いながら、プレゼンをさせると考えていたと思います。オンラインの授業になりましたので、Zoomでプレゼンさせることもできたと思います。しかし、限られた90分という授業時間の中で、20人の学生を円滑に回していくためには、提出させたものを全員で見た方が、時間の管理上スムーズに行くと考えました。2分間のYouTubeの動画を作らせて、それをアップする方法を取らせてもらいました。

これが良かったと感じるのは、教室の前のプレゼン、またはZoomを使ってその場でのプレゼンでも、いろいろ練習してプレゼンに臨むかと思います。YouTubeの場合、自分でやったものを、自分で見ることができるわけです。見直して、うまくいったつもりが、発音を間違えていたとか、ここのところが喋るのが早すぎたとか、いろいろ改善できる点が見えてきます。自分で納得するまで、何度も撮り直しができます。つまりそれだけ練習するということになります。

まずこれを自分でやって見せました。私が住んでいる葛飾柴又の帝釈天の大正から昭和に作られた素晴らしい彫り物を写真で撮って、パワポに入れて、YouTube で2分間の動画を作りました。 自分でやってみて、うまくいかなくて、何度もやり直しをしたという経験をしましたので、これは良い点だと思いました。

チャットの活用で良い点と疑問点・改善点がひと目でわかる

———これ以外にも思わぬオンライン授業のメリットがありましたら、お話しいただければと思います。

「自主企画ゼミ」という私の大学特有なものがございます。カリキュラムにないことでも、6人以上の学生がやりたいことがあり、それを指導する教員がいて、教授会の承認があれば、授業として成立するものです。

私は「英語教員採用試験対策講座」ということで、採用試験問題をみんなで解いでいくということと、実際の高校の教科書を使って、20分間英語で模擬授業をしてきました。模擬授業はビデオに録画します。その録画したものを見ながら、良い点、改善点、疑問点を付箋に書いていきます。動画を見終わった後、書いた付箋をホワイトボードに貼っていきます。書かれている内容が、似たものどうしをまとめてグループ化していく、いわゆるKJ法です。これによって模擬授業の良い点、改善点がひと目で図式化されるようなことを行っています。

今年になって模擬授業は、できないと考えておりました。 私はZoomで授業をしなければいけないことになった時にパニックになり、とても普通の授業もできないのではないかと思ったぐらいです。Zoomで模擬授業やらせるとか、それで授業研究を行うなどということは、全くできないと思っていました。

しかしやっていくうちに、Zoomには録画機能や、チャット機能があり、学生が自分の意見を書き込むこともできることがわかってきました。録画機能とチャット機能を使えば、授業研究ができるのではないかと考えました。

実際に20分間の模擬授業を学生にやってもらい、それを録画し、その録画したビデオ見ながら良い点だと思うこと、疑問点・改善点だと思うことをチャットで書き込んでもらいました。私の方は、それをすべてワードで作った表に、良い点のものは良い点の方にコピペして、疑問点・改善点というものは、疑問点・改善点の方にコピペしていきます。こうすると学生が行った模擬授業の良い点と疑問点・改善点がひと目でわかります。これで授業研究ができるのだなということがわかり、自分でもびっくりした点です。

———それでは逆にオンライン事業の問題点がありましたらお話しいただければと思います。

1番大きいのは、WiFi環境が整っていない学生がいるということです。カメラをオンにするとZoomから落ちてしまう学生がいます。そういう学生にとっては、本当に受けづらい授業なのではないかなと思います。

2点目は、全員がどういう状態で授業を受けているのかということが、非常に把握しづらいです。カメラをオンにすることは強制できませんので、オンにしない学生多いですし、オンにしていても、何を画面で見ているのかわかりません。授業を見ているのか、別の何か他のところを見ているのかわかりません。どれくらい学生が授業に集中しているのかということが把握しづらいです。

3点目としては、試験です。いわゆるペーパーテストが、やりづらいというふうに思います。知識を見るだけの試験というのは、不正行為がしやすいので、従来のものはやりにくいと考えます。

——いろいろとオンライン授業の良い点悪い点をお伺いしましたが、今後オンライン授業が対面授業に戻った場合に、オンライン授業のどのような点を活かしていけたらなとお考えでしょうか。
配布物を紙で配らなくて良いのは大変便利で、しかも置いておけば、学生が出席していなくても、後で取りに行くことができます。Google Classroomやmanabaみたいなものは、対面授業に戻っても使っていきたいと考えております。小テストを行う場合も便利で、時間を決めてスタートも終了させることもできます。その場で採点して、学生にフィードバックすることができます。さらに得点が記録されていきますので、大変便利な機能だと思います。今後も活用していけたらと考えています。

(2020年11月12日のオンライン・インタビューをもとに作成)