私のオンライン授業 第4回 —小林めぐみ先生(成蹊大学経済学部教授)—
「私のオンライン授業」第4回目は小林めぐみ先生(成蹊大学経済学部教授)に、この1年間のオンライン授業を振りかっていただき、心がけられた点や対面授業との違いなどを中心にお話を伺いました。
「おしゃべり」を通しての自己開示に時間
2020年度から新規にスタートした全学横断型の留学を目指す特別プログラムの1年次の必修科目の1つになります。定員が30名で、2クラスに分けて授業を行いますので、多くて10数名という授業になっています。
世界各国の講師の方と、予約をすれば毎日25分マンツーマンの英会話ができるオンライン英会話サービスを使って、授業内外でオンライン英会話をし、英語力の強化をはかりつつ、コミュニケーション力・異文化理解力をつける科目です。オンライン英会話を週に1回は大学で教員の指導を受けながら受講し、それ以外は授業外で積極的に利用してもらう予定でしたが、コロナ禍で全てがオンラインになり、オンライン英会話をオンラインでサポートしなければならなくなりました。幸い、学生はオンライン英会話の受講方法にすぐに慣れたようでしたが、結局授業中にオンライン英会話の時間を設けることはやめ、授業外に各自で取り組んでもらうことにしました。
そして、その分の時間を「おしゃべり」を通して自己開示の時間に充てることにしました。1年次で、コロナ禍で大学にも来られず、友達作りもままならない状況の中で、参加者が互いのことについて知る場を設けたいと思いました。毎回チャットを使って、好きな食べ物は?行ってみたい国は?趣味は?など肩の凝らないお題を出して、回答を送信してもらった後、それぞれ英語で話してもらいました。この時間をとったために英語で話す不安感も軽減されたようですし、オンライン上でしか会えないながらも、仲間づくりというか、連帯感は多少持てたのではないかなと思います。
パワーポイントの資料を入念に作成し充実させる
一番ネックになったのは、多読図書の確保です。今までは紙媒体の本をたくさん用意してあったのですが、アクセスできなくなってしまったので、急きょオンラインで読むことができる図書を用意しました。
以前オンラインの電子図書システムを使ったこともあったのですが、2020度はその予定ではなかったので、最初は無料サービスをたくさん取り合わせました。大学もかなり頑張って、丸善さんの「eBook Library」の学外活用を拡大してくれました。多くのサイトが多読図書を無料提供してくださり、初期の頃はとても助けられました。途中からは、研究にも関わるということで、科研費を使い「eステーション:英語多読の森」というサービスを利用させていただきました。それから、図書に加えて、読書記録もこれまで紙ベースだったものをエクセルに記入して提出する方式に変えました。授業内で実施していたアクティビティは、チャットやブレイクアウトルームなどを使うことでほぼ問題なくオンラインで対応できました。
よかった点は、電子書籍なので冊数に制限がなく、読む本が被っても、読むことができるところでしょうか。あとは画面共有を使うと、資料の提示が教室よりも非常に分かりやすいことです。教室内ですと、プロジェクターを使っても、後ろの席だとよく見えないことがありました。またチャット機能はとても便利でした。例えば、本の紹介をしてもらうセッションでは、チャットでその日紹介する本の題名を送ってと指示を出すことができます。あっという間にクラスのみんながどんな本を紹介する予定なのかがわかります。そのあとブレイクアウトルームに分かれて4人ぐらいで自分が読んだ本の紹介をしてもらうのですが、紹介用のパワーポイントを事前に作成してもらって、それを画面共有することで、対面時よりもむしろわかりやすいプレゼンができたようです。苦労したところというと、読書をしている様子が見えないことです。対面では今日は眠そうだとか、よく集中しているとかよくわかるので、必要に応じて指導できますし、それぞれの学生の個性なども見えていたのですが、オンライン上ではそういった情報が遮断されていてタイムリーな指導ができないもどかしさがありました。
できるだけ明るく話すことを意識
アメリカ英語やイギリス英語だけではなく世界各地で使われている多様な英語を紹介する授業です。英語は75か国で公用語として使われているので、1つひとつカバーはできませんが、そもそもアメリカ英語とイギリス英語の違いもあまり認識されていないので、そこから始めて、オーストラリア英語やアジアの社会言語事情、英語教育の状況など、地域を少しずつ回って見ていくような授業です。この授業も選抜メンバーだけの授業で、TOEIC500点以上の、定員30名の授業です。これまで結構長い間、この授業を持たせていただいているのですが、例年留学生をゲストスピーカーとして呼んで、リアリティーを持たせるようにしてきました。例えばオーストラリアからの留学生や、フランスからの留学生に、英語で参加してもらったりしていました。
繰り返しになりますけれど、資料作成を入念にしたことです。これまで対面では口頭で説明していたことを、簡潔にかつ明確に文字化し、提示するのに、かなり労力を使いました。またリアルタイム配信だったので、その時の授業で必要になる素材を、あらかじめすべてパソコン上に用意しておくのを忘れないように気を付けました。画面共有するパワーポイントの資料から、ZoomのチャットやFormsのアンケートのURLまで、授業中にもたつかないように準備しました。私の画面と学生の画面が違って見えますので、私も学生側の画面がわかるように、自分も参加者の一人としてiPadを使ってzoomに入り、iPadを見ながら、向こうにどのように映っているか、確認しながら授業をしていました。
先程も申し上げたチャットで、毎回授業の冒頭に趣味や好きな映画は?といった肩の凝らない質問をする、ということもしました。最初はチャットで回答を送ることにさえ抵抗感がありますが、1回使うと質問もしやすくなります。これによって学生は他のクラスメートの様子もわかり、多少なりとも緊張感を和らげることができたと思います。
賛否両論ありますが、私はできるだけカメラオンにしてもらいました。授業の冒頭で、一斉にあいさつをし、チャットで流してもらう時と、ブレイクアウトルームでクラスメイトと話をする時は、可能な範囲でカメラをオンにしてもらいました。そして、そのことをできるだけポジティブな形で伝えるようにしました。無理強いはできませんけれども、私の経験としては、お互いの顔が見える方が、授業の雰囲気がぐっとよくなります。最初は心理的なハードルがあるかもしれませんが、それを越えると、授業の質は高まる感じがしました。ブレイクアウトルームに入る前も、努めてフレンドリーにしてくださいと、しつこく言っていました。無表情でいると、相手も話しづらいということを、伝えるようにしました。自分もできるだけ明るく話すことを、意識してやっていました。
指示を明確に出すことも心がけました。ブレイクアウトルームに入る前なども、あらかじめ明確に指示を出しておくようにしました。口頭で話すと、聞き逃してしまうと考え、パワーポイントなどで見られるようにしました。小テストの時も、画面にタイマーを出し、あと何分残っているか、わかるようにしました。
対面授業でできたことは、ほぼオンラインでできたと思います。場合によっては、オンラインの方がかなり効率よくできたこともありました。苦労もありましたが、得ることも多かった1年だったと思います。
(2021年2月24日のオンライン・インタビューをもとに作成)
【参考資料】