私のオンライン授業 第3回 —臼倉美里先生(東京学芸大学教育学部准教授)—

インタビュー

「私のオンライン授業」第3回目は臼倉美里先生(東京学芸大学教育学部准教授)にオンライン授業でどのような工夫をされているか、何に注意されているかなどを中心にお話を伺いました。 

——先生の大学では、英語教育関係の科目は、前期後期を通じて、ほとんどがオンライン で行われたと伺っています。まず先生がご担当された科目をおおしえください。 

前期は本務校で専門科目の「中等英語科教育法 I」「教育実習の事前事後指導」と一般英語の「英語コミュニケーション」大学院で「英語科授業と教材・タスク B」という科目を担当しました。非常勤先では「第二言語習得」「学習英文法研究」という専門科目を担当しました。 
後期は、非常勤先で「英語科教育法B」という科目を担当しました。本務校では「中等英語科教育法 II」「英語教育学研究」「教職実践演習」という科目を担当しました。  

——オンライン授業はどのような形態で行いましたか。 

基本的に専門科目は、Zoomを使った同期型中心で行い、時々課題を出すオンデマンド型にする授業と、全て同期型の授業が混ざっていました。一般英語は基本的にオンデマンドで行いました。 

——オンライン授業を行う上で、どのようなことを意識して授業をされていますか。 

専門科目の方になりますが、勉強させたい内容をどのように定着させるかという観点と、学生と対面で会えない中で、どのように人間関係を築いていくかという2つを大きく意識していました。私が学生に知識を与える授業というよりは、用意したトピックについて、学生同士でディスカッションをさせて、考えさせることに重きを置いている授業でしたので、オンラインになって、それをどうやって実現するか考えました。 

——オンラインになって、専門科目の授業では、具体的にどのような工夫をされていましたか。 

Zoomの同期型で授業をする場合は、できるだけ多くの時間をディスカッションに使いたかったので、事前に資料を渡しておいたり、ディスカッションの準備のため課題を出したりしました。 
ディスカッションをするときは、学生を3、4人のグループに分けてブレイクアウトルームを使いました。私はカメラとマイクをオフにして、傍観者としてそれぞれの部屋に入って行きました。授業時間の最後の10分ほど時間を使って、全体のまとめをしました。 
そのまとめ方もいくつかパターンがありまして、1つ目は、それぞれのブレイクアウトルームで出ていた話の中で全体で共有すると面白そうな話を取り上げて、私がまとめるパターンです。2つ目は、私がまとめる代わりに、学生に頼んで自分たちのブレイクアウトルームで話題に上がったことを全体の前で発表してもらうパターンです。3つ目は、15分ほど時間がある時に、私の方で提示した話題について、私がファシリテーターになって全員でオープン・ディスカッションをしてもらいます。グループディスカッションで話題になったことを、このような方法でお互いにもう一度咀嚼することで、さらに理解を深めてもらいたいというねらいです。 

——お話いただいたようなやり方で、オンラインだからよかった点などがございますか。 

学生たちが通常の教室で机を付けて話す時は、教室全体がざわざわしているので、自分が黙っていてもあまり目立たないのですが、Zoomの小部屋(ブレイクアウトルーム)に入って話す時は、均等に責任が生じるみたいな感じになって、話さざるをえないようなプレッシャーを感じるようです。これはよい機会になったと思います。教員にとっては、各グループで話している内容を聞きやすかったということがあります。 

——教職の専門科目の授業では、模擬授業を学生にさせる機会がおありかと思いますが、オンラインでどのようにされているのでしょうか。 

模擬授業には、小さな活動ベースの10分か15分だけ、例えば音読活動だけさせるようなマイクロ・ティーチングと呼ばれるものと、1コマ(約50分)の授業をするものがあります。 
小さな活動をさせる時は、Zoomのブレイクアウトルームで4人ほどのグループに分けて、1人が先生役で他が生徒役になり、パワーポントを黒板に見立てて、画面共有をしながら、模擬授業を行います。先生役を交代しながらこれを繰り返します。30分から40分与え、全員が先生役ができるようにします。この授業をする時に気をつけていたのが、対面授業でも同じですが、1回で終わらせないということです。1回目の模擬授業で友達や私からのコメントや自分で気がついたことを踏まえて、翌週までに修正して、違うグループ編成にして、2回目の模擬授業をやらせるようにしました。 
もう1つの50分通しで授業をする方は、3、4人のグループに学生を分けて,グループごとに授業案を考え,1コマ分の模擬授業を分担して行います。例えば受講生が30名余りの場合,全部で8グループほどできます。模擬授業を行う際は,1回の授業時間に2つのZoomのミーティングルーム(メインルームとサブルーム)を用意し,2グループが同時進行で40分ほどの模擬授業を行います。私はその両方を後でじっくり見られるように録画しておいて、模擬授業の最中は、機器の不具合があった時に対応できるように、裏方の作業に徹しました。模擬授業が終わった後は、全員がメインルームに集合し,10分ほど振り返りの時間を取ります。この間,生徒役として授業を受けた学生は,WebClassという学内システムの掲示板にコメントを書き込みます。模擬授業を行ったグループの学生たちは、Zoomのブレイクアウトルームに入り,振り返りのディカッションをします。振り返りの時間が終わったら,模擬授業を行ったグループに自評と次の週のグループに役立ちそうなアドバイスを発表してもらいます。最後に私から総評と、次の週のグループに向けてのちょっとした課題を課します。あらかじめ学生には,後に模擬授業をするグループは準備時間が多くある分,前のグループよりも良い授業をするようにがんばってほしいと伝えているので,そのための宿題(プレッシャー)の意味合いがあります。授業が終わった後に、私自身が録画したものを見て、細かいコメントを書いて、全員が見られるように、掲示板に投稿します。 

——ZoomやTeamsなどを使いこなされているようですが、以前から使われていたのですか。 

ZoomもTeamsも知りませんでした。1年経ってようやく使えるようになりました。WebClassは以前から大学で導入していたので、対面授業の時も、2グループ同時進行の模擬授業(隣り合わせの2教室で実施)、掲示板の活用といった形式は行っていました。模擬授業以外についても、授業の中身自体は対面の時とさほど変わらないのですが、それをオンラインでどのようになるか少し戸惑いました。最初のうちは、Zoomがうまくいかなくて、失敗をしたりしましたので、対面の時に比べて時間的に余裕を持たせる授業計画を立てました。オンライン授業に慣れてくると失敗も少なくなったので、授業で扱う内容をを少しずつ増やしました。対面の時のよさをオンラインで失いたくなかったという気持ちでやっていました。 

——学生の反応はいかがでしたか。 

オンラインでもカメラをオンにしてもらっていると、表情とかは見えて、反応はある程度はつかめるのですが、教室で感じる空気感のようなものがわからないので、満足させられていないのではないか、前期は不安な面もありました。前期終了時の授業評価アンケートでは,対面のときとあまり変わらない反応だったので,かなり安心したのですが,自由記述のコメントの中に,授業中に使う資料を事前に共有フォルダにアップロードしておいてほしいという要望が書かれていたので,後期はそうすることで,授業に余裕が出てきたと思います。 

一般英語の授業をどのようにされているか、お聞かせください。 

前期の「英語コミュニケーション」という科目では、英語専攻でない1年生が対象でした。学生の実力差があると思いましたので、オンデマンドで毎週1回英作文の課題を出すことにしました。対面で一斉に授業をする時は、ぺワークやグループワークが中心で,英語ができる子とできない子が組むことで学び合いが起き,学生たちもある程度は成果を実感できるような授業ができます。しかしオンライン授業では、まだお互いをよく知らない学生たちをいきなりZoomのブレイクアウトルームに入れて、自分達だけでやってみなさいというのは無理だと思いました。その上個人差もあるので、個別指導しかないと思い、実験的に試してみようと思いました。 
英作文の課題は、“What’s up? Report”という名前で,私が用意したいくつかのトピック(例えば,おすすめの本を紹介するbook report,気になった時事ニュース,自分の好きなことなど)の中から好きなものを1つ選び,好きな分量を書いてもらい提出させました。 
学生から提出された英作文に対して私がフィードバックをする中で、個々人に応じて、このようにしたらもう少しよい作文になるとか、次はこんな情報を加えてみたらなどの、個別指導のようなやり取りをしました。学期が終わる指定の日までに8回以上提出することをノルマにしました。最初の授業のオリエンテーションと最後の2回は同期型にしました。最後の2回(14回目、15回目)は、今まで書いた作文の中で好きなものを1つ選んで、2分間のプレゼンテーションをさせることにしました。14回目は、40人のクラスをブレイクアウトルームで2部屋に分けて、20人ずつにしてリハーサルを行い、友達からアドバイスをもらったりしました。15回目の本番は,全員の前で1人ずつスピーチをさせました。学生にはできるだけクラスメートにとって楽しいスピーチをすることを目指すように伝え,パワーポイントなどの視覚教材を使って工夫するよう指示しました。 
またこの授業は、本来授業があるべき時間に学生は何もないので、毎週の授業時間にZoomの会議室を設定してチャットルームを開き,英語を話したい学生は自主参加できるようにしました。これは任意参加で成績と関係ないことは,学生に伝えておきました。実際にこのチャットルームに参加した学生はそれほど多くはありませんでしたが、少人数の方が英語を話す活動はやりやすいので、結果としてうまく機能したなと感じています。

——この新しい試みの授業に成果をお感じになりましたでしょうか。 

 一人ひとりのレベルに合わせて指導できたので、個々の満足度は高かったようです。授業が終わる頃に,メールで前向きな感想を送ってくれた学生もちらほらいました。
 また私が一人ひとりの学生をよく知ることができました。14回目の授業で実質的に初めて顔を合わせたわけですが、お互いに初めて会ったような気がしませんでした。このような人間関係が作れたことが、成果かと思っています。 

——また課題がございましたらお聞かせください。 

もう少し全員が集まる同期型をやってあげたかったということです。「英語コミュニケーション」という授業なので、英語を聞いたり話したりする時間を、学期の真ん中ぐらいに入れてもよかったと思います。 
もう1つは、教員の方の課題ですが、毎週40人と、このようなやりとりをするのは、楽しいですが、結構たいへんでした。他の授業などもありますので、課題を返すペースが遅くなってしまうことがありました。もう少し同期型を増やせば,学生にとっても私にとっても授業がやりやすかったのではないかと思います。 

——オンライン授業では、学生との人間関係を築くのに、先生方ご苦労されていますが、どのようなご工夫をされているのでしょうか。 

対面授業の時以上に、学生個人個人とつながる機会を作ろうとしました。私が学生個人に1対1の働きかけをしているという感触を、学生全員に持ってもらわなければいけないと思いました。そのためにやったことは、課題のフィードバックの時に、その子自身のユニークな部分や、アイディアに対して、ありきたりなコメントを返すのではなく、私個人がどう思っているかということを、なるべく1対1のやりとりをしていると思ってもらえるような言葉遣いをするようにして、フィードバックをしました。また、何か聞きたいことがあったら、課題でもレポートのところでも、質問を書いてほしいと一言付け加えておき、1対1のコミュニケーションがとりやすいようにしました。
もう1つは、非常勤先でやったことです。前期に2つの専門科目を担当しましたが、それぞれ30名から40名の受講者がいました。初めて会う学生で、その授業でしか会えないので、本務校以上に学生と1対1の関係を作る努力をしないといけないと思いました。前期は同期型とオンデマンドが隔週で交互でしたので、学期の真ん中ぐらいに、オンデマンドの授業の時に、学生一人ひとりとZoomで2、3分話をする機会を持ちました。どのような勉強をしているのかとか、ここまで授業をやってきてどうだったかとか、自己紹介をしたりとか、たわいもない話をしました。本来は課題をする時間に、学生は数分を使うだけなので、それほど負担にはならなかったと思います。これがどのくらい効果があったかわかりませんが、少しでもコミュニケーションが円滑になればよいという思いでやりました。
オンライン授業に対する学生の不満として、いつどのように質問をしてよいかわからないということがあると聞いたことがあります。質問がある時は、いつでも送りなさいと指示があり、メールアドレスが書いてあるだけでは、送れない子もいますので、そのような子にとって質問をする糸口を作ってやりたいという気持ちでした。 

(2021年1月15日のオンライン・インタビューをもとに作成)

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