私のオンライン授業 第1回 —靜 哲人先生(大東文化大学 外国語学部教授)—

インタビュー

 哲人先生(大東文化大学外国学部 教授)に、先生が前期に行なったオンライン授業についてお話を伺ってきました。 

———前期はほとんどの大学がオンライン授業になり、多くの先生は、始めてのオンライン授業に、突然取り組まなければならなくなり、いろいろご苦労されたお話を伺っています。本日は先生のオンライン授業の取り組みの概要と成果を中心に伺っていきたいと思います。まず前期に先生がご担当された科目をおおしえください。

 まず「英語教育学入門」という、実態は歌を教材として発音面を中心に鍛える科目と、「教科教育法(英語)基礎A」という2年生の教職科目です。あとは3年生と4年生が合同でとる20人ぐらいのゼミを担当しました。他大学で非常勤として、英語専攻ではない1年生の一般英語としてのリーディングと、主に3年生対象の実践的な音声学の科目を持ちました。

———オンライン授業は主にどのような形態で行われましたか。

ゼミのみでズームも使いましたが、他は全てオンデマンドの形で行いました。

———どうしてオンデマンドの形を選ばれたのでしょうか。

 ズームは私も慣れていませんでしたし、それ以上に学生の側に不確定要素が大きいと思われたからです。特に1年生は顔も見たことがなく、学生の通信環境が不明な点などもあり、なるべく予期できない要素をなくしたかったということです。

———初めてオンライン授業を行う上で、どのような点を心がけられたか、先生の立場と学生さんの立場から、それぞれおおしえいただけませんでしょうか。

 学生の立場からすると、オンラインの中でしか、教員がいないというか、授業がないので、出来る限り従来の対面授業に比べても、内容や負荷を減らさないことを心がけました。その後、世間ではオンラインは課題が多すぎるという声が一般に聞かれましたが、私はむしろオンラインは対面よりも簡単だと思われないように、あえてやや課題を多めにした場合が多かったです。2年生対象の教科教育法は特に多めにしましたが、1年生については課題があまり多くならないように心がけました。1年生はキャンパスに来たこともないし、もちろん私の顔も見たことがないわけですので、なるべく親しみを持ってもらえるように、静止画で「こんにちは〜」とか「こんな顔をしてまーす」のような感じのものを入れて、親しみやすさが伝わるように気をつけました。また最初の頃は声のトーンを意識して高くしたり、語学番組みたいに、ちょっとアップなノリの真似をするようにしてやりました。

———オンデマンド動画は、どのような方針で作成されたのでしょうか。

 特に最初の頃は、教科書があるかないのかわからない状況でしたので、画面の中だけ見れば、全て完結するように、教材類も全て動画に映すように考えました。
それまでの対面授業でも、パソコンを持ち込んで、スクリーンに投影する形で行っていました。オンラインでも、対面授業で今までやってきたことをなるべく盛り込むことを考えました。

 今までスクリーンに見せていた画面をそのまま録画するのを基本としました。そのためCamtasiaというソフトを購入しました。これまでの対面の授業では、スクリーンを見せながら、私がそこにいて学生の方に語りかけていたわけですが、オンデマンド動画でも、同じようにスクリーンを見せて、スクリーンの中から私が語りかける、という形です。ですから、対面からそんなに変わらないような形にしたつもりです。
 あとは動画を基本的にあまり編集しないようにしました。90分の対面授業では、当たり前ですけれども、90分間喋るのが授業なので、基本的にはパソコンの前で90分間何か語っている様子をそのまま動画にしてするのが、サステイナビリティのために重要だと思いました。
 しかし対面授業であればそこで発音させたり、音読させたり、フィードバックをしたりするわけですけれども、それができませんので、その代わりに、毎回課題で、音読の音声ファイルを出させて、それにフィードバックするようにしました。

———実際の授業の構成について、一般英語の授業を例にとってお話しいただけますでしょうか。

  一般英語に関して、教科書に指示してある活動をそのままを行いました。例えばリスニングとリーディングのパートがあって、最初は教科書を見ずに録音音声を聞きましょう、という指示があったら、そのまま「ではここでは教科書から目を上げて音声を聞きましょう」と言って、音声を流しました。対面であれば何をやるかを考え、それを極力そのまま動画の中で再現した、ということですね。

———教科書や教材はどのように扱われましたか。

 学期を通じて、教科書がなくても良いようにすべて動画に投影しましたやりましたが、これは教科書を購入しなくても良いという意味ではありません。必ず購入してくださいと、学期の最初に言っておいて、学期の最後に教科書とその上に自分の学生証をのせたものを写メしてもらうようにしました。最終的にはほぼ全員購入していました。
 使っていた教科書に関しては、このような使い方でも出版社に届けを出せば、許可されるということでしたので、届けを出しました。

———どのような課題を出されましたか。

 授業によって違いますが、動画の中で行った音読の練習の中から、2つか3つぐらいの文を指定して、そこのポイントに気をつけて音読したものを録音して、ファイルで出すという課題はすべての授業で出しました。そのほかにその日の範囲の中で使われていた語の英語定義を私が言って、その語を探す、という課題も多用しました。

———録音課題は毎回出されたのですか?

 毎回です。長さとしては、一般英語の場合は10秒ほどで、教科教育法は長めです。教科教育法が2クラスあって、合わせて60名ぐらいです。英語教育学入門の歌の方も60名ぐらいで、フィードバックに結構時間がかかりました。そのほかの授業は20数名以下なので、余裕を持ってフィードバックできました。

———フィードバックはどのようにされましたか?

 毎回次の授業の動画の冒頭の動画を、フィードバックの動画ということにしました。1週間先に次の授業というサイクルで上げる1本目を、フィードバック動画にしました。1本目というのは、90分の授業を一気に撮るのも大変なので、3本とか4本とかに分けて撮り、動画Part 1が必ずフィードバックという形にしたということです。
 動画の具体的な画面はというと、パソコンの中でフォルダを画面の左側に置いて、右側に今回の課題の文を出しておき、thや rなどのポイントを色分けしハイライトして、これが出来ているかどうか再生して聞いて、何かあるごとに止めて、一人一人にコメントをしている様子を全部録画して、それをフィードバック動画ということにしました。

———学生にはフィードバック動画をどう視聴して欲しいと思われましたか?

 フィードバック動画は60人分、20〜30分ぐらいはあるのですが、そのすべてを注意深く見て欲しいと思いました。第一に自分が出したものが、どう評価されるか気になるのはわかるのですが、それだけではなくて、こういった音声に、どのような判定が出るかというのを学ぶために、他の学生に対するものも全員分聞いてほしいと思いました。後期からは、あえて誰の音声を再生しているかというのを全く見えないようにしています。最初は学籍番号順にファイルが並ぶのを、サイズや提出順にソートするとかして、自分がどこなのかわからないようにしています。

———前期を終えて、学生の反応はいかがでしたか。

 授業自体に関しては、概ね評判よかったです。アンケートを取りましたが、好評だった一番大きな理由はフィードバックが丁寧だったことと、動画の中の説明がくわしくてわかりやすかったということのようです。後期への希望としては1年生からは「できれば対面がいいです、普通の大学生になりたいです」というのもあった反面、「対面はちょっとしんどいので、このままオンラインでお願いします」という声もありました。お互いに不安なく対面授業ができる日が少しでも早くくることを願っています。

(2020年9月29日のオンライン・インタビューをもとに作成)

靜 哲人先生が、ご自身のオンライン授業についてまとめられた論文が、下記よりダウンロードできますので、ご参考にしてください。

「2020年度前期コロナ禍におけるオンデマンド型主体の英語系オンライン授業」

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